研究概要 |
1.SCなど共有結合性セラミックスのモデル物質として、REDG効果が既に確認されかつ定量的に詳しく調べられているGaAsにつき、微小硬度試験における同効果の発現形態を調べた。試料にはn-GaAs単結晶(n=1.2×【10^(18)】【cm^(-3)】)を用い、(111)面にビッカース圧子で圧痕を刻印し、硬度値,クラック伸展長,塑性変形領域のひろがり、に対する光照射の影響を室温から400℃のあいだで調べた。照射光はアルゴンレーザーから得られる515nmの単色光で、照射強度は約25W/【cm^2】である。光照射効果はGa面でのクラック伸展の抑制として最も顕著に現われた。このことは、転位すべりがREDG効果によって促進され、クラック伸展の際に余分な機械的仕事として加わったとすれば良く説明される。いっぽう、硬度値や転位ロゼットサイズにはGa面As面ともに有意な照射効果は認められなかった。従って、微小硬度試験でREDG効果の有無を検証するためには、クラック伸展長に注目するのが良いことが分った。また上記の結果は、脆性材料においてクラックの発生を抑え破壊靭性を向上させるのに、REDG効果が利用できる可能性があることを初めて実証したものである。 2.SiCに関しては、硬度試験、高温変形、変形試料中の転位組織観察を行い、転位の運動挙動について次の諸点を明らかにした。(1)底面転位は拡張しており、積層欠陥エネルギーは極めて低い。(2)このため、易動度の高い部分転位成分は低温(400℃以下)まで運動が可能であり、これによるかなりの低温塑性変形が起り得る。(3)しかし、転位増殖は起らないので、過度の転位堆積によるクラックの発生は起らない。(4)従って、結晶中にあらかじめ高温変形により転位を導入しておき、高易動度部分転位の易動度をREDG効果で制御することにより、適度な塑性変形態を結晶に付与し破壊靭性値を向上できる可能性がある。
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