研究概要 |
1.目的:アトムプローブ(Atom-Probe,A-P)の特性を生かして、電導性高分子内の結合状態とドーパントの分布,酸化による結合状態と組成の変化,金属と高分子の界面での結合状態等を原子のレベルで解明することにある。 2.試料作製:A-Pの試料は先端の曲率半径が1000A以下の針状なので、Ptの針の上にポリピロール(PP)の薄膜を電気化学的に重合させて試料を作製した。PPに電導性を与えるドーパントとしてはC1【O(^-_4)】やB【F(^-_4)】が用いられた。PPと金属の界面は、A-Pの高真空中に装着された試料面上に金属膜をその場蒸着することにより形成された。 3.研究結果:a)PPの酸化は、PPを構成するC-H結合の間に酸素が入り込み、やがてHを遊離させて終了することが明らかにされた。酸化層の厚みは大気にさらす期間とともに増すが、3ケ月で約500Aである。b)ドーパントとしてPP中に含まれるC1は検出されなかった。これは、C1の蒸気圧が高く、表面に現れたC1原子は熱蒸発するためと考えられる。これに対して、融点の高いBは検出されるが、B【F_n】(n=1,2,3,4)としては蒸発しない。また、Bは酸化領域からは検出されず、酸化の進行とともに移動するものと考えられる。C)PP上にA1,AgやIn膜を蒸着して分析すると、ほとんどのAlとAgが単原子イオンかAlOまたはAgOとして検出されるのに対して、ほとんどのInはIn-CO,In-【C_2】【O_2】,In-【C_2】NOのように酸化されたPPのフラグメントと結合して検出され、金属原子はPPの骨格に入り込んだ酸素と結合することを示しており、他の手法による結果との一致がみられた。 4.将来計画:昭和62年度においても本研究は続けられるが、研究費が実質的には交付されないので大きな進展は期待できない。そこで、他の研究題目により開発が進められている走査型トンネル顕微鏡によりPP表面の形状と電子状態が調べられる予定である。
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