研究概要 |
本年度は,非晶質Si膜の表面のみにP原子を導入して表面の固相成長速度を加速し,成長後に表面をエッチングする表面選択ドープ横方向固相成長法について検討した. また,前年度に主に検討した成長方向に対する選択導入技術に関しては,実際に相補型MOSFETを製作して評価を行なった. まず,表面選択Pドープ法に関しては,P導入部の厚さに比例して成長速度が増加することを示し,さらに断面SEM観察よりノンドープ層における成長速度の遅れはないことを示した. また,これらの現象は,P原子の導入により(111)ファセット面上での核形成速度が増加するというモデルにより統一的に説明できることを明らかにした. この他,表面選択ドープ法を用いると,種結晶部近傍で成長Si膜の結晶性が顕著に改善されることが見出され,この方法は特にSi膜厚が薄いSOI(絶縁物基板上のSi)構造を形成するのに有効な方法であると結論した. 成長方向の選択ドープ法に関連して,表面にSiO_2膜の付いた非晶質Si膜の横方向固相成長特性について検討した. SiO_2膜の堆積にはプラズマCVD法およびECR堆積法を用いた. 結果として,SiO_2膜厚が0.2μm程度の場合には,Si膜の固相成長特性に大きな影響を与えないことを明らかにし,MOSFET製作への応用の可能性を示した. 最後に,成長方向の選択ドープ法を用いてCMOSFETを製作した. Bを導入した領域は多結晶化時間が短いため,Pチャネル型をバルクSi中に製作し,nチャネル型を横方向成長させたSOI膜中に製作した. この構造においても,CMOS集積回路の高密度化で問題となるラッチアップ現象は完全に防ぐことができる. 結果として,SOI膜中に製作したn型FETの特性は良好であったが,バルク基板中のP型FETに漏れ電流が多いという問題が残された.
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