研究概要 |
本研究の目的は固体内部に自己捕獲励起子が生成されず電子励起による欠陥が生じない物質においても表面で価電子励起による原子放出が起ること, およびその機構を明らかにすることである. そこで光吸収による熱的効果を避けるため間接バンドギャップ半導体であるGaP結晶正試料に用いその清浄表面へのレーザー光照射による原子放出および表面構造変化の測定を行った. 表面構造変化は照射前後の表面をLEEDにより測定し, 原子放出はレーザー光による共鳴イオン化法を用いたGa原子放出の測定を行った. GaP(iii)表面について本研究で得た結論は以下の通りである. 1.間接バンドギャップエネルギー近くのレーザー光の熱的効果を無視出来る照射強度で電子励起による原子放出および表面構造変化を起す. 2.間接バンドギャップエネルギー近くに原子放出および構造変化を強く誘起する表面励起準位がある. 3.Ga原子放出と表面構造変化は照射強度に対して強い非線形的依存性を示し, ともに同一の照射強度しきい値を持つ. このことはこれら二つの現象が高密度電子励起効果により誘起されることを示している. 4.実測されたGa原子放出量は構造変化より推算された原子数より5桁あまり少ない. このことは照射により起る原子放出はP原子が主要でGa原子は殆んど表面にとどまることを示していると思われる. 5.照射により構造変化した表面はしきい値以下の照射強度でGa原子を放出する. この現象は構造変化後に表面上に残存するGa金属が熱的に蒸発することによると思われ, 4.での推論を強く支持する. 6.原子放出の詳細な機構を明らかにするためには, 放出の主要元素であるP原子の高感度測定が必要である.
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