研究概要 |
フルカラーエレクトロルミネッセンス(EL)パネル実現のためには、三原色(赤,緑,青)発光を得ることが必要不可欠である。緑色ELについては、すでに実用化に十分な輝度が得られているが、赤色,青色については問題点が多い。本研究では、赤色,青色EL発光を得るため、新しい発光母体材料としてCaS,SrSをとりあげ、EL薄膜作製条件,EL特性について検討した。得られた知見を以下に記す。 1.CaS,SrS薄膜を電子線蒸着法により作製した。蒸着時の基板温度を400〜600℃にあげることにより膜の結晶性は改善され、またイオウの共蒸着を行うことにより化学量論的組成比からのずれも少なくなった。 2.CaS:Eu(赤色)およびSrS:Ce,K(青色)EL素子を電子線蒸着法により作製した。CaS:Eu素子は、650nm付近にピークを持った【Eu^(2+)】イオン固有の許容遷移による発光を示した。得られた輝度は170cd/【m^2】(1KHz)であった。SrS:Ce,K素子は475nm付近にメインピークを、530nm付近にサブピークを持つ【Ce^(3+)】イオン固有の許容選移による発光を示した。得られた輝度は650cd/【m^2】(1KHz)であった。また、SrS:Ce,K素子はヒステリシス特性(メモリー効果)を示した。 3.青色発光SrS:Ce,K薄膜EL素子の励起機構を検討するため、パルス励起(パルス幅100μs,繰り返し周波数1KHz)によるEL発光波形を測定した。その結果、1回の励起期間に3回の発光が観察された。第1ピークは電圧が立ち上がらないうちに、第2ピークは電圧の立ち上がり直後に、また第3ピークは電圧の立ち下がり直後に観測された。第1ピークと第3ピークは電界が発光中心を直接衝突励起するにはあまりに低すぎる時見られるため、直接衝突励起によるものとは考え難く、むしろエネルギートランスファーによるものと思われる。
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