研究概要 |
1.ウインドシア中を飛行する航空機について, 航空機と風速の空間的分布の相対的なスケールを考慮し, 空気力と安定微係数の計算式を導いた. 数値計算により飛行特性を検討した結果, 主翼と尾翼との相対的な位置, 間隔が縦運動の固有値に影響することを見いだした. 2.ウインドシア中の航空機は風速の時間的変化も経験する. この際の風の加速度の影響について非定常空気力学理論を用いて解析し, 加速度微係数の計算式を導出した. これを用いた数値計算の結果, 風の加速度によりフュゴイド・モードの運動が若干の影響を受けること, および加速度に依存する外乱としての空気力が無視できないこと, などが分かった. 3.風洞に2次元的なシア流れを発生させ, 主翼と尾翼を組み合わせた2次元模型について空気力の測定実験を行い, 風速の空間的分布の影響に関する計算式の妥当性を明らかにした. また風の加速度に依存する空気力が存在することを実験により定性的に確認した. 4.上記の模型を強制的に振動させてその振動特性を調べることにより, 安定微係数に対するウインドシアの影響が検出できることを確認した. 5.航空機上で風速変動を実時間で測定するための最適推定法を研究した. これは, 慣性航法装置を中心とした機上航法機器のデータから航空機の対地速度を推定し, それを対気速度の実測値と比較して両者の差を風の速度とするもので, シミュレーションによりこの方法が有用であることを示した. 6.風速変動に伴う飛行経路の変動を防ぐ目的で, レギュレータとしての最適制御則を用いた自動飛行制御装置の突風抑制効果を調べ, 一応の効果があることを確認した. 風速変動の推定値を制御則に取り入れることによってさらに優れた効果が得られると思われるが, これは将来の研究課題として残された.
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