研究概要 |
1.浸食の下限界衝撃圧と浸食機構:浸食量は材料が吸収した衝撃エネルギに比例することを考え, キャビテーション気泡崩壊の衝撃力の分布と浸食量の測定結果を結合させて, 浸食被害を引きおこす衝撃力の下限界値を求めた. 下限界値は材料の硬さにともなって大きくなる. また高含油中では材料の疲労強度が向上するために下限界値は大きくなり, 浸食粒子の脱落が抑制され浸食被害は小さくなることが明らかになった. 2.気泡崩壊圧と浸食量の相関性:下限界衝撃圧が材料の疲労限度に対応すると考えて, それ以上の衝撃力の分布を疲労のS-N曲線と対比させ直線疲労被害則を適用すると, 種々の材料の潜伏期間あるいは最大浸食率の逆数はΣni/Ni(Ni;ある応力での破壊繰返し数, ni;それに対応する衝撃力の発生数)と1対1の相関関係を示す. また質量減少率曲線で減衰期, 定常期へと進展するのは, 浸食面の凹凸の増加による気泡崩壊の衝撃エネルギの減少によることが明らかになった. 3.流れ系における気泡崩壊圧:流れ状態下で発生する気泡崩壊圧とその中で浸食に影響を与え崩壊圧の分布を研究した. ブンチュリ管では衝撃パルスの発生数は非常に少ないが, ピット発生の下限界値以上の衝撃パルスの全発生数に占める割合は磁歪振動装置のそれに比べて大きいこと, また回転円板法ではピット発生の下限界値よりもやや小さい衝撃圧の繰返しが, 浸食面の変形→破壊に大きく関与していることが明らかになった. 4.浸食面形状の解析:画像解析装置および触針式あらさ計を用いて浸食面の経時変化を統計量として表示する計測システムを研究したが, さらに発展させるとともに気泡崩壊圧との対応を解明する研究が必要である. 以上の結果から, キャビテーション気泡崩壊圧の分布と下限界値がわかれば浸食量を予測できることが明らかになった.
|