FRMの信頼性に関する研究として、1)各種無機繊維の引張強度の信頼性実験、2)調製したFRMの引張強度の信頼性実験、3)FRM強度の計算機シミュレーションを実施した。この実験と解析を通して、FRMの強度の信頼性評価に関する当初の目的をほぼ達成することができた。得られた結果をまとめると次のとおりである。 (1)無機繊維の強度分布は多重モードワイブル分布によって表わされる。すなわち、無機繊維の破壊起点となる欠陥は内部欠陥、表面欠陥および反応欠陥の3種類が存在し、その強度分布は各欠陥集団の強度分布の競合によって決定されると考えると、従来の単一ワイブル分布に比べ多重モードワイブル分布は実験結果との適合性に秀いでていることが認められた。またFRMを製造する過程において、繊維と母材との反応が進行するほど反応欠陥が繊維強度の分布を支配するようになる。 (2)FRMの信頼性は繊維の強度分布およびFRMの破壊過程に大きく依存する。非累積破壊が起きるときは繊維強度の最小値分布に従うが、最弱繊維が破壊してもなお破断に至らないとき、信頼性は向上する。 (3)シアラグ理論を用いて単層板の強度を計算機シミュレーションすることによって上の結果を確認することができた。しかしながら、同理論では母材の受持つ軸力および軸方向と垂直な応力分布を扱うことができないので、より厳密なFRMの応力解析には問題があると思われた。また再帰法によって同様な強度の累積分布曲線を予測した。その結果、実験で得られたワイブル母数を用いてFRMの強度分布を良好に再現できることを確認するとともに、強度の平均値および変動係数についても比較的良好に予測できた。 (4)本研究の副次的成果として、複合材内に埋め込まれた繊維強度のワイブル母数を推定する新試験法を提案した。
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