研究概要 |
従来のドリルの大きな欠点である過大なスラストを軽減し, 穴加工の高能率化を図るため, 新考案によるチゼルのない新刄形ドリル(チゼルレス・ドリル)を開発し, その設計, 研削法, 加工特性を理論と実験で明らかにした. (1)従来のチゼル部形状のドリルと加工特性の比較を行った結果, 本研究で開発したチゼルレスドリルによれば, 切削スラストは大幅に減少(円錐研削ドリルの約1/2〜1/3)し, 高能率加工が可能であることがわかった. (2)本刃形は偏心した二つのアペックスポイントを有し, 中心部まで0度のすくい角を持つと同時に切りくず空間の大きな形状となっている. (3)従来のバイトの切削理論をこのドリルに適用して, 切れ刃に沿うスラスト分布を求め, 実験結果との比較を行った. その結果本刃形によれば, ドリル中心部の切れ刃において従来のドリルのような押し込み作用は生じていないことが確認された. すなわち中心部までスラストは理論計算と合致した. (4)アペックス間隔を大きくすると切削性能は良くなるが, 内切れ刃の半径方向不平衡力により刃先の食い付き時にやや不安定となる. しかし両切れ刃を中心から若干偏位させることにより, 不平衡力を小さくすることが可能となる. アペックス間隔は直径12.5mmドリルに対し1mmが適値であった. (5)本刃形は万能工具研削盤を使用し, 砥石の外周面, 端面での同時加工を行うことにより, 所定の形状を容易に成形することができる. (6)高性能条件をねらう刃形のため, 振れが生じるとアペックス部が欠けやすい, そのため高剛性工作機械を使用する必要がある. (7)超硬2枚刃ドリルや3枚刃ドリルへの応用を試みた結果, いずれも大幅なスラスト軽減が得られた. 特に3枚刃ドリルの場合に効果が大であった. (8)今後, 深穴加工ならびにエンドミルの刃形設計への応用を考えていきたい.
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