研究概要 |
遠心ポンプのキャビテーションによるチョークを避けその性能を向上させるため, 羽根入口角を大きくとり目玉径を大きくすることが多い. その場合却って羽根車吸込側の逆流に基づくキャビテーションが生じ易くなる. したがって, その逆流機構を明らかにする必要があるが, 入口流れが複雑なこともあり殆ど検討されていない. そこで, 本研究では, 逆流の発生機構を解明し, キャビテーションとの関連に対する知見をえることを目的とした. 逆流が発生すると発生入口流れの軸対称性が崩れるため, 定常測定では羽根に対する逆流の発生位置や規模が求まらない. そこで, まずピトー管を用いた非定常計測法を確立した. その後, オープンインペラを用いて逆流発生と性能および羽根間圧力分布の関係を調べ次のような成果をえた. 羽根入口角が大きいため, 最高効率点の95%流量(無衡突流入時の45%流量に相当)で既に入口流れは羽根ピッチ方向に大きく変動し, 逆流が発生し易い状態となり, 90%流量になると逆流が観測される. その規模は大きく, 羽根端近くで羽根1ピッチ間全域となり徐々に範囲を減少しながら羽根高さの1/4では前縁付近に限定されるようになる. 更に流量が減少しても羽根入口断面上の逆流範囲は殆ど変わらず, 上流側へ拡大するようになる. 逆流が生じると入口付近の羽根負圧側の広い範囲で圧力が大きく上昇し, また圧力側付近にも局所的な圧力上昇がみられる. 前者は羽根面に沿って羽根端側へ流れる二次流れの影響, 後者は前縁よどみ点位置が羽根圧力面側へ移動するためと考えられる. このことは油膜法による可視化結果からも確認されている. また, 羽根面上の圧力分布は特異点解法から求まる分布と同様な傾向を示すが, 前縁近くの実験値は計算値に比べかなり小さくなる. なお, 逆流規模や羽根間圧力分布に及ぼす羽根端すきま幅の影響は少ない.
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