研究概要 |
水ベース磁性流体を縦横比1:10の二次元流路内に流動させ、それに作用する一様磁場の大きさ,方向を変化させ、管摩擦損失に及ぼす影響を実験的に調べ、微粒子の鎖状構造についての知見を深める。実験に使用した垂直磁場用電磁石は120×80mmの磁極を有し磁極間隔は23mmで、磁束密度は約0.6Tまで連続的に変えることができる。また軸方向磁場用電磁石は全長200mm,内径114mmのソレノイドコイルで磁束密度は約0.1Tまで変え得る。電磁石を傾けるのに設置台を用い、垂直磁場用電磁石で鉛直方向を中心に±6°まで、軸方向磁場用電磁石で軸方向を中心に±16°まで変えることができる。管摩擦係数λ=【1/((1/2)ρ(√!(a^2))(1/2h))】【(Δp)/l】(Δp:管長l間の圧力降下,υa:平均流速,ρ:密度,h:流路の高さ)は、流れの方向に対する磁場方向の傾斜角度θ=90°では磁場の強さの増加とともに増加するが、θ=0°ではほとんど変化しない。また印加磁場の強さを一定としθを変化させると、θが大きいほどλは大きくなる。なお磁場の方向を上下,左右対称に変えても、流れの方向を左右に変えても圧力損失は変化しない。次元解析の結果、λは λ=f(【Re^*】,NM,NH,n,θ)と表せる。上式中の無次元数はそれぞれ 【Re^*】=((96【n^n】)△【ρυ(^(2-n)_a)】【(2h)^n】))/(【2^(2n+3)】【(2n+1)^n】△K)=(慣性力)/(粘性力),【N_M】=(μMH)/(【KD(^n_w)】)=(磁気力)/(粘性力),【N_H】=M/H(磁性流体の磁気的性質) を表す。但しDw=【(2n+1)/(3n)】【(6μa)/K】:壁面ずり速度,K,n:物質定数,M:磁化の強さ,μ:透磁率を表す。実験結果より、λ=(96/【Re^*】){1+0.004【(1+sm^2θ)^(3.2)】【N^(-0.15)】【N(^0.4)_M)】なる実験式が得られる。このことより磁場作用下での流れにおいて、磁性流体中の微粒子の磁気モーメントは磁場方向に配向し、かつ微粒子間の磁気力の作用により微粒子が磁場方向に鎖状構造を形成し流れの抵抗となることが分る。かくしてθが大きくなるほど圧力損失が大きくなることになる。
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