研究概要 |
昭和62年度の研究実績は以下の通りである. 1.各断面内の速度乱れ及び渦度の測定:流れの可視化で得られた画像データをデジタル処理することにより, 流れと直交する断面内の速度乱れ及び渦度変動を測定した. 測定された速度乱れは, その高次のモーメントを含めて従来の測定結果と良い一致を示しており, 測定の妥当性が確認された. 渦度変動の測定では, 流れ方向の渦度変動強さが, 壁近傍で極小値をとることが実験的に初めて示された. また速度ベクトルおよび渦度変動の断面内分布より, 流れ方向に軸を有する渦が多くの場合単独で存在すること, 流れ方向のスケールが従来の指摘よりもかなり小さいこと, および渦度場が壁近くでその符号を反転する階層構造をなすことを明らかにした. 2.温度場の空間的挙動の測定:感温液晶を用いて, 伝熱面上の温度変動の挙動を観察し, カラー画像処理を施すことにより定量的評価を試みた. 3.構造論的乱流モデルの改良:X型およびスプリット型プローブを含む熱膜流速計の自動校正システムを構築し, 校正に与える諸因子の検討を行った. またI型プローブを用いて二次元チャネル乱流の測定を行い, 壁近傍の乱流場に関する基本的データを蓄積した. 上記の一連の画像データに基づく測定結果と, これらのプローブからの測定結果をふまえ, 乱流構造に立脚した乱流モデルの改良を行った. 本モデルでは, 壁近傍の縦渦構造と外層のバルジ構造とを考慮することにより, 壁から遷移領域までの乱流諸量の予測が可能となった. 4.構造論的乱流モデルによる乱流伝熱機構の予測:開発された乱流モデルを用いて壁近傍の乱流温度場をプラントル数0.02ー70の範囲で解析した. その結果, 平均温度, 温度乱れ, 乱流熱流束等の分布は実験値と良い一致が得られ, 本モデルの伝熱解析への有効性が確認された.
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