非共沸混合冷媒を用いた高温用ヒートポンプの実用化のために、各種混合冷媒の熱力学的及び輸送的物性値の整理、基本冷凍サイクルを対象とした熱力学的理論計算に基づく性能解析、熱交換器部の伝熱性能や各構成機器の不可逆損失を考慮した冷凍サイクル模擬コードの開発、及び、蒸発器の伝熱性能に着目した水平管内蒸発熱伝達の実験を行った。 混合冷媒の物性値に関しては、ペン・ロビンソン状態方程式に基づくデータベースを開発しつつあり、主要な混合冷媒に関しては開発を終了している。混合冷媒を用いた冷凍サイクルの熱力学的解析に関しては、出力温度を80℃として単一冷媒と比較すると、十分大きな伝熱面積を有する向流型熱交換器を蒸発器、凝縮器に用いる場合には成積係数の向上、圧縮比の低下、能力の増大などが期待できることが分かった。しかし、伝熱面積が十分でないときには、以上のような特徴は失われることも分かった。現在は、ハードウエアの情報、熱交換器の伝熱性能、周囲環境の情報などを入力すると、冷凍サイクルの動作点が計算され、性能を予測できる解析コードを開発中であり、単一冷媒に対するものはほぼできあがている。 水平蒸発管に於ける混合冷媒の伝熱性能の実験に関しては、R114とR22、R11とR12についての実験をほぼ終了した。気液二相流の熱伝達率を液単相で流れた場合の熱伝達率で無次元化した値をボイリング数とマルチネリのパラメータを用いて相関し、単一冷媒の場合と比較すると、クオリテイの小さい領域においては熱伝達が50%程度低下することが分かった。また、その原因として、気液界面における二成分の物質の拡散抵抗が重要であることも明らかになった。
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