研究概要 |
1.毛筆文字のコンピューターによる合成: 漢字パターンは, 偏旁などの部分パターンからなり, それらは更に画からなり, 画は起筆部・終筆部・行筆部・転筆部などからなる. 更に, 筆触パターンとその動きに分解される. この階層構造に着目して, 人間の書写動作をできる限り忠実にシミュレートした文字合成法を考案し, 階層分解合成法と名付けた. 本方式の特徴は, 毛筆文字の変形が思うがままにできるため文字デザインシステムとして極めて強力であり, かつ書道知識をコンピューター上で実験するためのツールとして用いることが出来るところにある. 本方式はパラメータをデータとして記憶しており, それにもとずいて書写動作をシミュレートし文字を合成する. このため文字の美しさに関する書道知識を活かすことの可能性が生まれる. 2.文字データの作成と書道規則のルール化: 美しい手書き漢字毛筆を生成するためには, 文字毎に必要なデータを作成する必要がある. この作業を楽にするためにパラメータデータを半自動的に生成できる方法を考案した. また書道書には, およそ百余りの書道規則が述べられている. これは抽象度が高く, コンピューターにプログラムするのは難しい. 従って書道規則を一つずつルール化することが必要である. 本研究では, 大きく見える字は小さく書き, 小さく見える字は大きく書けという小大大小法を取り上げ, そのルール化に成功した. 3.エキスパートシステムの構築: 以上の準備のもとに, 書道知識を持ち, 美しい毛筆文字をデザインするのに有用な, 毛筆エキスパートシステムの作成に取り掛かった. システムは, パターン生成部・パラメータ抽出部からなるインタフェース部分と, 文字構造知識ペース・パラメータデータベース・書道ルールベースからなる知識データべ-ス部分とそれらを管理する推論部分からなる.
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