研究概要 |
1.10μm帯から可視光への高効率パラメトリック映像変換を実現するため,非線形媒質としてアルカリ金属蒸気を想定し,最も重要なパラメータである非線形感受率を計算した。その結果,以下の結論が得られた。 (1)非線形媒質としてセシウム蒸気,2光子共鳴準位としてその6d【^2D-(3/2)】を用いる差周波数光発生の過程に伴う非線形感受率が大きく,この過程が有望であることが判明した。(2)上記過程は非線形感受率が大きいため,従来知られていたナトリウム蒸気を用いて紫外線に変換する過程よりも数百度C温度を下げられることが判明した。このことは,従来用いられていたヒートパイプの原理に基づく非線形媒質容器ではなく,画像変換に好適な大口径でかつ薄い非線形媒質容器の実現の可能性を示すため重要な結果である。 (3)上記の計算結果により,入力する赤外線およびポンピング光の望ましい偏波方向,およびポンピング光の望ましい波長が判明した。 2.もう一つの重要な問題は位相整合に関するものである。この問題について理論的に検討した結果,以下の結論を得た。 (1)セシウム蒸気の温度があまり高くない範囲では,バッファガスを混入しなくても,コリニアな系でほぼ位相整合条件が満たされることが判明した。 (2)蒸気温度が高い場合には,位相の不整合量が正のため,視野はドーナツ形(中心部の変換効率が低い)となり望ましくないことが判明した。 3.以上の理論的研究の成果を踏まえて,セシウム蒸気用の容器の設計・試作を行なった。また励起用レーザの調整を実行中である。更に,検出系等に必要な実験器具の選定を実行中である。
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