研究概要 |
寒冷積雪地の路面に堆積する雪氷は交通に大きな影響を与える。特に近年はスパイクタイヤによる車粉発生の問題と関連して注目を集めている。しかし、路面に堆積する雪は自然の雪原における作用以外に、車輌通行による人工的な作用を受けるため、その構造や物性は極めて複雑であると考えられるが、この点に重点を置いた調査研究はこれまでほとんど行なわれなかった。本研究は路面雪氷の構造、物性、消耗過程を気温,日射量,風速,交通量等の違いに注目して調べ、将来路面積雪の人工制御を実施する際の基礎資料を得ることを目的としている。 本年度は札幌市内の特定の路面を選定し、厳寒期,温暖期にそれぞれ約一週間の連続観測を行なった。観測項目は、日射量,気温,風速,路面積雪の厚さ,構造,硬度,アルベド,温度,等である。日射量,気温,風速,アルベド等の測定から路面積雪表面の鉛直方向の熱収支を見積ったところ、日射の項と融雪による潜熱の項に比べて風による顕熱項は無視できるほど小さいことが明らかとなった。現在のところ通行車輌による熱供給量の見積りはできていないが、その量は車輌による機械的削はくに比べるとかなり小さいと考えられる。しかし、交通量の極めて多い路線や気温が氷の融点に近い条件ではかならずしもこうはならない。 路面積雪の構造と硬度が、気象,交通量等の違いによってどのように時間変化するかが調べられた。その結果、構造と硬度の変化過程は雪の加圧焼結による圧密過程として理解できることが明らかとなった。しかし、路面積雪の場合自然雪原や氷河における圧密の駆動力の他に車輌や融雪済等の人工的な要因も介在するため現象が複雑である。次年度(最終年度)は特にこの点に重点を置いた調査解析を進める予定である。
|