研究概要 |
関東平野南西部における地震動の群列観測では, 1987年12月17日の千葉県東方沖の地震(M=6.7,D=58km,東京・横浜で震度N)の際, 全ての観測点で良好な記録が得られ, 一部の観測点では最大振幅が10kineを越えるものであった. しかし, やや長周期成分は, 短周期(1秒以下)成分に比べ極めて小さく, 伊豆半島や相模湾周辺の浅い地震(例えば1986年11月22日の伊豆大島近海の地震,深さ4km)程は平野の厚い堆積層内での層長は認められなかった. 堆積層内でのやや長周期成分の増長過程は, 基盤との境界面と地表面とでの全反射の繰り返しによってほぼ説明できているが, その前段階として, 堆積層への入射角がやや長周期成分の発生機構に大きく関与していることを, この地震は示唆していると考えられる. 一方, この地域の堆積層の構造は地下深部探査結果から, 平野中心部では厚さ3〜4kmであることが明らかにされているが, 平野周辺部での堆積層厚の変化(基盤の傾斜)は明らがでない. この基盤の傾斜は, 地震波の入射角に大きく関わるものであることから, 今後の地下深部探査でその点を明らかにしていくことを計画している. 関東平野北西部(熊谷付近)での3地点地震観測で得られた長野県北部の地震(1986年12月30日)の記録から, 周期6秒程度の後続位相は, 約700m/sの速度で北西から南東方向へ伝搬しているLove波であることが確認された. 同地域でのやや長周期微動の群列観測からは, 地震時の後続位相と同様の周期5〜6秒の成分が卓越することが確認されたが, その伝搬速度は400m/sから1km/sのバラツキがあり, 速度を特定することは困難であった. ただし, 周期3〜7秒で求められた伝搬速度の最小値の変化は, 上下動と水平動では異なっており, それらの変化を既往の研究による地下構造に基づく表面波の分散曲線と比較すると, 上下動はRayleigh波, 水平動はLove波の分散曲線と良い一致が見られた.
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