研究概要 |
構造帯コンクリート強度の部位的変動の実態, およびこれら強度変動が鉄筋コンクリート構造の力学挙動に及ぼす影響の解明を目的として一連の検討を行った. それらの結果は, およそ次のように要約できる. 1.構造体コンクリート強度の部位的変動 (1)構造体に打設されたコンクリートの水セメント比および単位粗骨材量の部位的変動は, コンクリート工事における施工手順の適正化により, 部材最上層部を除き, かなり低減することができる. (2)実構造体に打設されたコンクリートの水セメント比は, 打込み高さ190cm程度までの範囲では部材位置にかかわらずほぼ一定である. しかしコンクリートの圧縮強度は, この範囲でも圧密に伴う密実さの変動の影響によって部材下部から上部に向かって, ほぼ直線的に低下する. (3)一般的形状・寸法のコンクリート柱材の場合, 圧縮強度の打込み高さ方向の変動の様子は3本の折れ線式で近似することができる. この場合, 柱材上下端の強度差は約26%であった. 2.鉄筋コンクリート構造物の力学的挙動 (1)コンクリート強度が構造部材内部で一様な場合と変動する場合とでは, 骨組の崩壊過程, ならびに塑性化時の作用水平せん断力の大きさが異なる. ただし, 水平せん断力と層間変異関係に及ぼすコンクリート強度の部位的変動の影響は, 大変形領域において若干認められる程度である. (2)荷重による柱頭および柱脚の曲げモーメントの大きさが比較的近い柱材では, コンクリート強度の部位的変動のために柱上下端の塑性化順序が逆転する場合がある. (3)RC柱の地震応答特性は, コンクリート強度の部位的変動よりもむしろ主筋の付着特性に著しく影響される.
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