研究概要 |
新規購入した超音波横波解析装置により、コンクリート試料を対象とした実験検討を行った。試料の厚さ、すなわち超音波横波の伝播距離が10cm程度までは、凝結初期から透過波の観測が十分可能であることが確認できた。但し、この場合、透過波のパワースペクトルを調べた結果,振動子の共振周波数である30kHzの信号波を入力した場合においても、フレッシュコンクリート中を透過した波には約10kHz以下の成分のみが観察された。この原因として、(1)各周波数成分毎の位相速度の違いにより波束が伸び、見掛上低周波の波形となる。(2)試料がフィルターとしての役割を果す。の二点について検討を行った結果、後者に依ることが明らかとなった。すなわち、0.5,1,2,4,8,16,30,60kHzを中心とし、それぞれ、ごく狭帯域のバンドパスフィルターを通した波について、吸収係数の周波数依存性および経時変化特性を検討した結果、凝結初期においては高周波成分の減衰が著しく大きいため、遠方まで透過できないことが明らかとなった。なお、吸収係数を周波数の関数として表した場合、その極小値が時間経過と共に高周波側に移行する現象が認められたが、このことは、パルス波を構成する周波数成分のうち、凝結段階に応じて透過しやすい周波数(共振現象と考えられる)が存在することを明らかにしたもので、これは、従来ばく然と周波数が変化するとされていたことに対する解答を与えるものである。上記の各周波数の波について、それぞれ、動的ずり弾性率および動的ずり粘性率を計算した場合、両者は何れも周波数依存性を有するが、その経時変化特性より得られる凝結開始時間に関しては、周波数に依らず一定であることが確認された。又、今回の実験で得られたコンクリートの凝結開始時間の調合依存性に関しては、従来のセメントペーストおよびセメントモルタルに関して得られていたものと一致し、その整合性が認められた。
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