研究概要 |
3年継続の2年目に当る今年度は, 多種トレーサーガスによる換気量測定法,道内高校の暖房実態に関するアンケート調査,体育館など大空間の熱環境改善方策, 断熱・気密化校舎の熱負荷解析などの研究を行った. 本年度は換気量の実測が目標であったが, ガス発生法, サンプリング, 分析に検討すべき問題があり基礎実験にとどまった. しかし, パルス発生と濃度積分法を用い, ガス発生量を連立方程式に加えることによって多数室建物での換気量実測法としてほぼ満足しうる成果を得ることができた. 学校暖房の実態調査は道立寒地建築研究所と協力して道内の高校337校を対象として行ない, 197校からの回答を得た. A重油を用いた蒸気暖房が主流であるが, 体育館の貧しい環境, 教室の熱環境および空気環境, 給排水の凍結などに問題の指摘が多かった. 最も遅れている体育館の環境改善の鍵が断熱にあることは言うまでもないが, 大空間としての熱気流性状を調べるために実測, 模型実験, 数値解析を行なった. 本年度は特に, 断熱された大空間の夏の環境改善をはかるために上方開放型の空間での温気の排出と冷気の積層状況を調べ, 傾斜屋根頂部での開放が, 活動空間の気温と放射環境の改善に有効に働くことを確認した. 熱負荷解析の側からは, 断熱25mm・2重窓の在来型, 3重窓で気密化をはかった改修型, 外断熱100mm3重窓の改良型の3種類のモデルを作成して比較検討を行った. 夜間の換気損失を減らす改修型あるいは改良型では連続暖房化による設備負荷低減が大きく, 従来の学校暖房の常識を大きく変える環境改善の可能性が十分にあることを知ることができた. これらの成果をとりまとめると共に, 現実的な改善を促すことを目標と 建築学会北海道支部に設けられた学校暖房の研究小委員会とも協力して, 設備費をも含めた検討を進めている.
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