研究概要 |
昭和61・62年度の補助金を受けて,中世住居の発掘調査資料の集収につとめた結果,北海道・東北・関東・北陸・中部・九州地方についてほぼ終了し,残すは東海・近畿・中国・四国地方のみとなり,63年度に全国的に集収を完了する予定である. 資料集収の方法は中世住居址だけでなく,ここ数年来の発掘調査報告書から縄文時代〜近世にわたる全時代を対象にして全ての住居遺構をカード化し,かつ集落遺跡についても別にB_4版のカードを作成しており,遺構カード総数約2万枚,府県別・時代別カードファイル180冊,集落カード約200枚の資料を得た. 集収した資料に基ずいて,主として縄文時代の住居の復原についての論考を2点発表し,中世住居の復原については63年中に,三重県草山遺跡を中心にしてまとめる予定である. これまで集収した資料の範囲から, 中世住居の変遷の概要を記すと, 平安時代末期から鎌倉時代にかけての時期は, 北海道・東北地方を除いてきわめて特徴的な住居が流行する. すなわち, 規模は桁行5間から13間, 梁間4〜5間の大型で, 屋内の柱通りの全てに柱を立てるもので, しかも柱は細く, 側柱と内部柱で均一な柱路をもっている. このような建物は室町時代に入ると急速に衰えて身舎と出の狭い庇による形式と, 間仕切りが複雑化して近世民家に引継がれるものと思われるが, なお, この間にも東北・北陸の日本海沿岸地方には竪穴住居の集落が存続するなど, 古代住居とは異なった新しい展開を示している.
|