研究概要 |
本年度(初年度)は装置の購入と、予備的研究を行う予定であったが、予定をはるかに超えて、研究が進展した。 ディンプリング装置の導入による、試料のイオン照射損傷の軽機は、ほぼ予想どおり、あるいはそれを上回った。損傷による表面の凹凸が減少し、かつ内部に侵入するアルゴンガスの減少によって、電顕像に現われる、黒白のまだら模様が著るしく減少した。また、イオン研磨に要する時間が、従来の1/4に短縮されたので、高分解能電顕という評価手段の唯一の欠点といわれた。生産性の悪さをかなり改善する事ができた。 電顕観察は、主としてガリウムヒ素,アルミニユームヒ素超格子のヘテロ界面に対して行われたが、結晶格子の破壊や、表面の凹凸が著るしく減少したので、ヘテロ界面に存在する、一原子高さのステップを、不安定要素なしに確認できる程に質の高い高分解能写真を得る事ができた。この事は昨年京都で開かれた、国際電子顕術鏡学会等で発表した。これにより本代表者の考案した〔100〕入射法によるヘテロ界面観察法の信頼性と有用性が確かなものとなった。昨年秋の物理学会および応用物理学会に、招待講演者として招かれた事は、そのひとつの現われである。 ディンプリング装置による、試料の前処理と高分解能電顕による観察は、わずか一分子層の厚さしかない、超格子に対しても試みられ、一分子層の厚さでも、その断面を観察できる事が、最近確かめられた。写真には、厚いガリウムヒ素中に存在するアルミニユームヒ素の単層がはっきりと、格子像でとられられている。この結果は、高分解能電顕の可能性に、新らたにして確かな一項目をつけ加える事となった。
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