研究概要 |
パルスYAGレーザによるマイクロスポット溶接あるいはマイクロ穴あけ加工時の、入射ビームと物質間に生じる動的相互作用について、高時間分解能写真観察法により詳細な実験的検討を加えた。得られた主要な成果は以下の通りである。 1.照射時間が0.24〜3ミリ秒と極めて短いパルスレーザ加工現象を観察するために、露出時間が40ナノ秒のパルスルビーレーザシャドウグラフ法及びレーザストロボ法を開発し、通常の高速度カメラ法(8,000コマ/秒)と併用して、任意の時刻における現象の超高時間分解能写真観察に成功した。 2.照射パワー密度があまり高くないレーザスポット溶接の場合、ビーム照射開始直後(約200〜300マイクロ秒)に試料表面は溶融し始め急速に溶融池径は増加するが、その後極く短時間(100マイクロ秒前後)で溶融池表面は沸点に達し、激しい蒸気流(プルーム)がビーム入射方向に発生する。プルーム発生はその後入射ビームエネルギが或る臨界値に減衰する迄継続するが、プルームにより入射ビームエネルギの一部は吸収・散乱され溶融池径の拡大は大いに抑制される。レーザ照射完了と共に溶融池は急速に凝固するがその速度は通常のTIGアークに比して10〜100倍と著しく速いことが判明した。 3.照射パワー密度が高いレーザ穴あけの場合、試料表面の溶融・蒸発はより短時間(数10マイクロ秒)で生じ、プルームの速度も格段に早くなる。プルーム発生の反動力により、形成された溶融池は凹み、穴から蒸気流が噴出する際溶融金属も同時に噴出するため、レーザ照射後は表面に溶い穴が形成される。尚溶融金属が噴出する際、高温の液体が周辺の固体部を溶融するため、穴径が著しく拡大する。
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