研究概要 |
1.置換度0.9, 分子量7万のCM-キチン準希薄溶液について, 以下の結果が得られた. (1)動的光散乱測定結果:CM-キチンのCaイオンとNaイオンに対する結果と, Caイオンに対して特異性を示さないカルボキシメチルセルロースに対する結果との比較より, 準希薄溶液では, CM-キチンのCaイオンに対する作用は, Naイオンなどの一価カチオンに対すると同じ高分子電解質溶液に特有な静電的作用が主であると考えられる. (2)X線小角散乱散乱測定結果:無塩系CM-キチン溶液, カルシウムイオン添加溶液, 2価の鉄イオンが酸化して3価のイオンを含む溶液の散乱図形はそれぞれのキチン分子の集合状態を反映して, 大きく変化する. CM-キチン濃度と鉄イオン(2価と3価)濃度とを広く変えた測定から, 二価の鉄イオン添加時の散乱プロファイルに及ぼすCM-キチン濃度と添加塩の効果は全く異なる. 前者の効果は理論の予測と一致するが, 後者の効果は理論の予測と逆の傾向にある. 小角散乱測定で観測している量がキチン分子に比べ小さな領域を反映しているものと考えるなら説明可能である. また, 三価の鉄イオン添加時の散乱プロファイルは, 二価の鉄イオンを含む溶液が十分酸化した時の散乱関数の振る舞いと一致する. このことは, 断面の回転半径の結果の比較とも一致する. またCM-キチン分子のCaイオンに対する作用が特異的なものかどうか確かめるために, さらにCM-キチンの置換度をかえて, 二価の鉄イオン添加時とCaイオン添加時との散乱関数の詳細な比較研究が志向される. 2.試作EXAFS装置は, 鉄箔を用いて徹底的にテストされた. カーブフイッテングのR因子は, 7%となり, 完成してものと考えられる. 鉄イオンを含むCM-キチン粉末の予備的実験がなされた. Caイオンを含むCM-キチン測定のために, EXAFS装置全体の見直しがなされた. このラインに沿って装置の改良が進んでいる.
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