研究概要 |
東北・北海道地方におけるコンクリート製品の凍害の実態を調査した結果から、その原因は、(1)製品には空気が連行されていなかった。(2)凍害を起したのはすべて流し込みによる振動製品であり、スランプが大きかった。(3)1日2工程という苛酷な養生工程で成形されていた,などによるものと整理される。さらに、ASTM-C291による空気中凍結(一18℃),水中融解(+5℃)の方式による凍結融解試験の結果、30サイクルごとに供試体の動弾性係数を測定し、試験前の動弾性係数に対する百分率で劣化過程を追跡した。前置き3時間,1日1工程の供試体について配合の種類による劣化過程の追跡した試験結果では、プレーンコンクリートでは2個の供試体とも90〜120サイクルで崩壊している。これに対してAEコンクリートでは300サイクル後も動弾性係数の減少はほとんどみとめられない。これが前置き0.5時間,1日2工程の供試体について配合ごとに示した試験結果でもほとんど同じ傾向が示された。これらの結果から明らかに蒸気養生をしたコンクリートでも連行空気が凍結融解の反復作用に対して大きな抵抗力をもっていることがわかる。そしてこのことが前置き時間の短かい、しかも1日2工程という苛酷な条件で養生された供試体についても示されたことは注目すべきことである。 一方、前置き時間の短かい1日2工程による成形では、脱型時強度の低下あるいは製品の表面に発生する気泡が増大するなどの問題が残された。実験によると、この気泡は凍結融解の反復作用によって増大することが確められた。しかし、この気泡が凍結融解作用によるコンクリートの破壊や崩壊を引き起す要因にはなっていない。しかも1日1工程で成形した製品では凍結融解作用による気泡の成長も明瞭にはみとめられなかった。とすれば外観の点から製品には耐凍性に必要な最小限の空気量を連行し、過剰な空気の連行はむしろ避けるべきものだともいえよう。
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