研究概要 |
1.わが国で初めて、大規模な海面干拓地を昭和61年の営農開始当初から畑地に利用する笠岡湾干拓地では、昭和52年夏の干陸当初から塩に由来する畑作物の生育障害がけ念されていた。干陸後は畑地基盤造成や営農技術体系の確立を目指した努力が続けられてきたが、最近に至り除塩と土層改善の進行はまったく停滞してしまった。その原因を研究した結果、除塩の進行と共に土壌の物理性が悪化し、それがひいては除塩の停滞をもたらすという悪循環が明らかとなったのでその対策として石膏を客入することを提案し、かつ合理的な石膏投入量決定理論式を定めた。 2.陽イオン交換反応の理論式に基づき、場所的変動を考慮して計算された石膏量を昭和59年度末に散布・混入した施工区において、時間的経過に伴う吸着NaイオンのCaイオンによる交換の進行状況を追跡調査した。その結果、石膏の投入により土は分散反応がおさえられて凝集状態となり、保水性の向上,コンシステンシー指数の低下,透水性の増大,気相率の増加等の物理性の改良がもたらされたことから、土層改良が将来にわたり着実に進展していくものと思われた。 3.除塩の進行状況を電気伝導度値から判定すると、昭和60年度から61年度にかけて、大いに除塩が進行した地点があらわれた。干陸以降の除塩の進行と停滞現象を総合的に判断すると、その除塩速度は極めて顕著なものであるといえ、これは石膏を深さ50cmまで深耕ロータリーにより混入した物理的・化学的複合効果が発揮されたためといえる。また、ほとんど除塩が停滞している地点でも、周辺環境の相対的変化が進むに従い、ゆるやかな速度ではあるが塩分濃度の低下は着実に進行するであろうことが確信できた。
|