研究概要 |
本年度は穀物のDTA分析を行ない, 熱変性温度を明かにするとともに. 速度論的解析を行ない活性化エネルギーを算出した. また混合穀物の水分移動の法則を明かにし, 予備試験として食品構成溶液物質の凍結点測定をおこなった. 1)穀物の熱変性温度の測定と解析:玄米, 小麦, ビール麦および小麦澱粉の示差熱分析(DTA)を行ない,変性温度(補外開始温度)53.5,55.1,54.4,51.0℃を確認した. なお, 反応の最も進むピーク温度は昇温速度の大きいほど高温側に移行するが, これはKlssingerの式を利用して速度論的に解析され, 活性化エネルギーとして256.4,232.8,197.7,199.2kj/molが求められた. 2)混合穀物の水分移動:籾, 小麦, ビール麦について2主の水分と5種の温度の組合せについて, 密封等温系で水分移動を測定し, 一方拡散理論から平衡含水率が一定に保たれることを證明し, ヒステリシスの実験式を見出し, すべての実験結果が完全に拡散理論により説明出来ることを確認した. ヒステリシスは次式で示される. Δm=3.371ー0.08081(T_pー273.15) これは表面張力が温度の上昇と共に減少することによって説明できる. 3)食品成分溶液の凍結点の熱力学につての予備実験:食品に含まれる溶液の成分は約30種類の基本物質からなるが, このうち食塩, しょ糖, ぶどう糖等の数種類の物質について濃度と凍結温度と共晶点の測定を行なった. しかし, 共晶点の確認できたのは食塩だけで, 凍結温度も理論式に従わなかった. 現在測定法の検討を行なっている.
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