研究概要 |
1.光励起による原子ポピュレーションの非等方性の性質を、現実にも重要である光強度が大きい場合について、ブロードライン近似の元で、理論的,実験的に調べた。密度行列に対するマスター方程式を立て、その解より得られる発光の強度と偏光を実験的に確かめ、レーザー誘起分光実験の基礎づけを完成した。 2.励起原子ポピュレーションの非等方性(アラインメント)はプラズマ中では電子・イオン衝突で緩和するが、この過程についての知識は皆無であった。我々はアフターグロー・プラズマを作り、プラズマ分光学の方法で電子密度,温度を決定した。そのプラズマにレーザー誘起蛍光分光法を適用し、電子・イオン衝突によるアラインメント緩和をネオン2【p_2】準位に対して世界で初めて観測した。イオン衝突の効果をイオン・マイクロフィールドによるアラインメントの時間発展として取扱い、我々の実験条件下では十分小さいことを見出した。得られた電子衝突によるアラインメント緩和の速度係数はシュタルク拡がりのそれに殆ど一致した。これは両過程とも、励起原子波動関数の位相の緩和として理解できることによる。 3.ヘリウム・イオン-ヘリウム原子の衝突により作られる励起原子ポピュレーションの非等方性を発光の偏光により調べた。その結果、衝突過程は今まで考えられていたような小角散乱のみではなく、大角散乱の寄与が大きいこと、一重項と三重項準位原子の比較から、衝突過程ではスピンは必らずしも無視できないこと、が明らかとなった。
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