研究概要 |
本研究の目的は、主として溶液相から結晶が成長する場合の成長單元のサイズ、挙動を実験的に明らかにするところにある。数十オングストロームないしそれ以下のサイズの粒子の運動を把握しなければならないから、考えうる手段は、これら会合粒子(クラスター,胚芽状粒子)のブラウン運動を、レーザー光を用いて測定する光散乱法である。この方法と、すでに代表者の研究室で開発・成功している結晶成長過程のその場観察法、および成長中の結晶のまわりでの拡散場や対流を視覚化する方法とを組みあわせることによって、当初の目的を達成することができる。 媒質中の徴細粒子のサイズや、その拡散定数の測定法として、コロイド中の懸濁粒子の測定のためサブミクロン粒子アナライザーが開発されている。これはブラウン運動をする粒子のレーザー光による散乱光のドップラー効果を測定することによって粒子サイズ、拡散定数を測定する方法である。しかしこの方法は、そのままでは粘性の小さい水溶液中での粒子サイズの測定には適さず、種々の改良をほどこすことが必要である。また、結晶の成長單元の測定にこの方法を適用した例はない。そこで、本年度は主としてこの方法を水溶液系に適用するための実験的検討を行ってきた。この検討に用いた系は、ロッシエル塩,シヨ糖,NaCl,KN【O_3】,Ba【(NOー3)ー2】の水溶液系である。その結果、必要な改良、組みあわせを行なうことによって、径30オングストローム程度まで測定できる見透しがたてられた。そこで、これらの結果をふまえて、まったく新しくシステムを考え、それをもとにサブミクロン粒子アナライザー1式、およびこの実験に必要な顕徴鏡,写眞撮影装置,デジタルマルチメーターなどの附属装置の発注を行ない、納入された。昭和62年度にはこれらの装置を用いて、実際に測定が開始されるであろう。
|