研究概要 |
1.溶融塩パルスラジオリシス法の確立とコンピュータコントロールドパルスラジンオリシス体系の作製:(1)タンマン管にニクロム線を巻き、耐火レンガで熱しゃへいされた窓付き電気炉を自作した。現在、700℃まで実験可能。それ以上の温度ではタンマン管の赤熱による近赤外部の測定への影響を検討する必要あり。(2)16ビットマイコンにより制御された溶融塩パルスラジオリシス体系を作製した。この体系により、吸収減衰波形の取得・処理・解析(吸収減衰波形のS/N比改善、時間依存スペクトルの測定(10nsー2s)、動力学的解析、吸収減衰波形シミュレーション)等が自動的に実行しうる。これらに必要なプログラムを自作した。(3)LiCl、KClは所定の組成に秤量後、円筒型石英アンプル(12mmφ×100mm)に入れられる。高温下で長時間(約2日)脱気された後、1×【10^(-5)】torr以下で封じられたものを試料とした。 2.LiCl-KCl混合物融体のパルスラジオリシス:(1)時間依存スペクトルの測定:波長280〜900nm,照射後100ns〜8usにわたる時間依存スペクトルが測定された。その結果、吸収バンドの位置及び寿命の差違から、【e(^-_s)】,【Cl(^-_2)】,【Cl(^-_3)】に帰属される3種類の過渡的光吸収種の存在が見い出された。(2)吸収スペクトルの温度・組成依存性:【e(^-_s)】に帰属された可視-近赤外部のスペクトルは顕著な温度・組成依存性を示した。塩化物融体におけるこの温度・組成変化は融体の巨視的密度から計算された平均イオン間距離の変化として概略説明され得る事を示した。(3)捕捉剤添加効果:0.05MのCd【Cl_2】,Zn【Cl_2】を添加した融体中に於て、【Cd^(2+)】,【Zn^(2+)】による【e(^-_s)】の捕捉剤効果を確認した。((1),(2),(3)の実験結果を総合的に判断して吸収バンドの帰属が決定された。) 3.LiCl-KCl融体の放射線分解機構:【Cl^~】w→Cl+【e(^-_s)】を開始反応とするpikaev等の反応機構は本体系に於てもほぼ妥当である事が示された。さらに、【Cl(^-_3)】の存在がスペクトル的にも新らたに示された。
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