高速増殖炉の原子炉スクラム時には、炉心発熱量の低下が冷却材流量低下より速いため、低温の冷却材が炉容器上部プレナムへ流入する。高温流体の下に低温流体が流入すると、浮力のため両者は混合しにくく、上下に層状に分離する温度成層化を生じる。この成層界面が振動することがある。タンク型高速炉上部プレナムを周方向に同じ厚さで切取った約十分の一縮尺模型と水を用いて実験を行った。炉心から流入する低温水は炉心上部機構(UIS)で水平に曲げられ、プレナムを斜めに横切って中間熱交換器(IHX)に吸込まれる。一部はIHXの壁に沿って界面に達し、界面の下をUISへ向かう。この流れが界面から離れて潜込むとき、高温水を連行していることが観察される。界面振動のため連行は周期的に生じる。低温水中に引込まれた高温水の浮力はその上の界面を押上げようとする。界面の上昇と浮力とが同期していると振動にエネルギが供給される。ところで流れが十分速いと連行された高温水はただちにUIS側へ達する。界面の運動と上下層水間速度差変動の位相差、速度差変動と連行発生量変動の位相差、運ばれる高温水量と蓄積量の位相差を総合すると、この場合は界面の動きと浮力とは逆位相である。流れが遅くなると界面の動きと浮力が同相になり、振動にエネルギが供給される。以上述べたモデルは、流速と振動数により振動が発生したりしなかったりすることを示唆している。解析モデルにより計算された振動発生域と実験結果を比較すると、1次モード、2次モードともよい一致がみられた。以上で振動発生機構はほぼ明らかとなったが、実際の高速炉で現象がどのようになるかを知るには、モデルの精密化に加え、連行現象自体の詳しい理解が必要であり、さらに実験を続ける予定である。
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