研究概要 |
1.〔序〕気体状放射性同位元素試料の放射能の測定法として比例計数管がよく用いられる。しかし計数管には一般に端効果と呼ばれる計数効率の低い領域が存在し、計数に寄与する有効体積を正確に決定することができず、放射能測定結果に大きな誤差を伴う。 2.〔目標〕この端効果を克服し、放射能の絶対測定を可能にする全く新しい方法として部分抵抗陽極線を用いた電荷分割位置検出型比例計数管を用いる方法を提案した。61年度は部分抵抗陽極線の作製ならびにこの陽極線を装着した位置検出型比例計数管の作製およびこの計数管を用いた【^3H】ガス放射能の測定を行なうことが目標であった。(新しい原理の説明は省略する)。 3.〔結果〕得られた結果について次に述べる。 (1) 直径42μmのパイレックスガラス線にクロムを真空蒸着して抵抗体を作り、一部分を残して他の場所に金を真空蒸着して導電体にする方法によって、比例計数管の陽極線としては全く新しい考え方である部分抵抗陽極線を作製することができた。 (2) 内径40mm,長さ838mmのステンレス製計数管を作製し、前述の陽極線を張った。 (3) 単位体積当りの放射能強度を測定したい【^3H】標識メタンガスを一定量計数管内に注入し、充分拡散させたあと計数管を動作させたところ、期待通り端効果を完全に除去した測定が可能であることが判った。そして放射能強度を±0.7%と言う従来よりも1桁近く高い精度で測定できた。これらの結果は米国国立標準局(NBS),英国国立物理研究所(NPL)から注目されている。4.〔今後の展開〕 今後はこの手法を他の放射性ガス(【^(14)C】,【^(37)Ar】,【^(39)Ar】,【^(41)Ar】,【^(127)Xe】,【^(131)Xe】,【^(133)Xe】等)の測定、中性子束密度の絶対測定、低バックグラウンド測定に積極的に応用して行く。
|