本研究は、1.海岸地形の形成過程とプレート間地震による地震性地殻変動の関係、2.内陸性活断層の変動様式と山地・盆地の分化過程に関して研究することによって、変動地形の形成過程を明らかにすることが目的である。昭和61年度は上記の目的のために次のような調査研究を行なった。 1.駿河湾周辺の海岸地形の調査を行なった。その結果、完新世の地殻変動は駿河湾西岸ではかならずしも一様ではなく、隆起傾向の地域と沈降傾向の地域がそれぞれ分布する。完新世における隆起は、最近70年間の測地データによる沈降運動とは相反する動きであり、長期的にはいわゆる"東海地震"に伴なる地震隆起が複合している可能性が高い。また焼津市付近は沈降傾向にあるので、沖積層のボーリングを行ない、深度50mまでの連続試科を採取した。堆積物の分析およびC-14年代測定は来年度に行なう予定である。 2.伊那谷において、断層地形の調査を行なった。当地域の活断層の変位様式と変動速度を求めた結果、ネットスリップが8mm/年またはそれ以上の逆断層運動であることがわかった。またこの逆断層は低角度の断層面をもつことが予想されるので、伊那谷を横断する路線について、重力探査を行ない、その解析に必要な水準測量を実施した。この重力探査のデータによる地下構造の解析は来年度に行なう予定である。
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