膜タンパク質は多くの重要な生体機能を担っている。したがって、膜タンパク質の立体構造の形成機構が明らかになれば、生体機能の改善にもつながる大きな応用が開ける。そこで本研究では、豊富な一次構造についてのデータベースを用いて膜タンパク質の立体構造を予測するためのアルゴリズムについて考察し、さらにそのアルゴリズムを補強するための実験を行うことを目的としている。膜タンパク質構造を実験的に決定することが極端に困難な現状では、本研究は膜タンパク質構造に関する一つの有力な手段となる。 一般に膜タンパク質(内在性膜タンパク質)の構造は、周囲の環境から強く制限を受けているため、すべて膜を横切る数本のヘリックスの束を基本とした構造となっている。しかもヘリックスを膜中に安定化させている力は疎水性相互作用であるということがわかっており、一次構造も非常に単純な特徴を備えているのである。これまでに行った実験をまとめてみると、第一にバクテリオロドプシンという典型的な膜タンパク質を用いて変性実験を行い、三次構造を作る結合が主として水素結合であるということがわかった。第二に種々の膜タンパク質の一次構造を解析した結果、ヘリックス間には水素結合ができていると考えざるを得ないことがわかった。つまり、三次構造はヘリックス間の水素結合でできており、立体構造予測には最適な水素結合ネットワークを構築すれば良いという方針が明かとなった。本研究は大変難しい課題である。その困難な問題に対して、本研究は大きなくさびを打つことができたとおもう。今後はさらに分解能の高い予測の研究に進むことになるが、そのためには分子グラフィックスやエネルギー計算などの手法も積極的に取り入れていくことが必要であろう。
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