研究概要 |
ショ糖ラウリン酸エステルで可溶化したウシ・ロドプシンおよびミミイカ・ロドプシンとその光産物についてX線小角散乱の実験を行った. ウシ・ロドプシンの場合は, 光中間体の寿命は室温では短いので低温にして安定化する事によって測定する試みを行った. X線溶液散乱の場合, 高純度でかつ1%程度のロドプシン溶液が必要とされる. また, 試料中のロドプシンに結合していない界面活性剤の濃度とバックグラウンド測定用の溶液中の濃度とが一致しなければならない. 本研究において, ConAセファローズ・カラムを用いたクロマトグラフィーとポリバッファー交換体ゲルを用いる事によって, 上記の条件を満足する試料調整法を確立する事ができた. ウシ・ロドプシンの場合, 室温では光退色に伴って会合体が形成される事を確かめた. 次に低温でX線散乱を測定するための試料セルおよびセル・ホルダーを作製し, 0゜Cと-29゜Cの間で実験を行った. その結果, 光照射によってはX線散乱曲線に有意な差は認められなかった. しかし, -7゜C付近で溶媒が凍結すると散乱曲線は非常に大きく変化した. 温度を再び上げて溶媒が融解すると速やかに元の曲線に戻った事から, この変化はロドプシンが相分離的に集合した事によるのでは無いと思われる. ミミイカ・ロドプシンの場合は12゜Cで光照射前後の試料についてX線散乱の測定を行った. その結果, ロドプシンと酸性メタロドプシンで散乱曲線に有意な差が認められた. 例えば, 内部構造を強く反映する高角側の2次ピークの位置で散乱強度に3%以上の変化が見られた. 現在のところ, どのような構造変化が起ったかは明らかでは無いので, 今後は溶媒の電子密度を変えた測定を行って, より定量的な解析を進める予定でいる.
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