研究概要 |
61年度の研究計画に従い、Na原子をCu,【Cu_2】,【Cu_3】,【Cu_4】,に近づけ固体にNa原子が近づく場合のシュミレーターとした。計算方法は主にSCF法を用い、得られた平衡点で、配置盟間相互作用法の計算を行い、SCF法で得られた電荷の動きが正しいか、否かをためした。NaCuを除き、Na【Cu_2】,Na【Cu_3】,Na【Cu_4】全てで、Naの3s電子は、Cuクラスターの空軌道,又は部分的にCuクラスターの4s電子が入っている開殻軌道へと流れこんだ。流れこみの過程をNa【Cu_3】を例にとり示す。核間距離が充分に離れている時Naの3s電子は3s軌道に、【Cu_3】の3個の4s電子の内2個は【Cu_3】の結合軌道に、1個は反結合軌道に存在する。両者の距離が6.5a.u 位になった時Naの3s電子が【Cu_2】内の反結合軌道に流れこみ、その内の一部(0.2個)がNaの3Ρπ軌道を通じて還流される。それでもNaは+0.84に帯電しており、Cu内の結合的3s軌道よりおよそ0.5個の原子を奪い安定化する。この時Naの3s,3ΡΖ軌道がこの還流に寄与する。結局、Naから【Cu_3】へは0.3個の電子が流れこんだ事になる。以上の結果はSCF計算に基づく解析であるが、配置間相互作用の結果も同じであった。【Cu_2】,【Cu_4】へNaを吸着させた時のNaからの電荷の流入は各々0.3、0.2であり、固体においても0.1〜0.2個程度の電荷がNaから金属銅へ移ると期待される。又電荷移動のメカニズムも上述のような過程を踏むのであろう。NaCu,Na【Cu_2】,Na【Cu_3】,Na【Cu_4】の結合エネルギーから、Naの金属銅上への初期吸着エネルギーが、外挿法により算出されたが52Kcal/molであった。実験値はないが、Na-Ag(110),Na-Ag(111)の値が各々47,55Kcal/molである事から見ると妥当な値であろう。又吸着系のイオン化エネルギーはCun系のそれに比較して0.6-1.5e【V】程度低く、仕事関数がNaの吸着と共に低下するという実験結果と良い対応をなす。なお科研費の一部を使い、STFを用いたCueの計算を行ったので了承されたい。
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