研究概要 |
本年度の研究では、まず(1)強誘電体の分極場がその表面に接合した酸化物薄膜の吸着特性にどのような効果を与えるかをしらべ、さらに(2)強誘電体を下地基板とする弾性表面波発生のための基本設計を行ない吸着に及ぼす弾性表面波効果をしらべた。強誘電体として単分域化処理したニオブ酸リチウム単結晶(自発分極の方向は (イ)では表面に垂直とし片側に正また反対側に負分極面を露出、また(2)ではY軸に128°回転)を用いた。 (1)においてはTi【O_2】およびSn【O_2】半導体酸化物を電子ビーム加熱あるいは抵抗加熱により30〜90nmの薄膜として接合させさらにその表面にAu電極を取付け吸着用素子とし、【H_2】,CO,【C_2】【H_4】,C【O_2】およびCOの各種気体を吸着させたときの表面電気電導度の変化をしらべた。Ti【O_2】およびSn【O_2】共に下地強誘電体が正分極面の場合に負分極面に比べ著るしく高い電導度増加を示した。吸着による正および負分極場の違いは吸着気体のイオン化ポテンシャルが大きい程大きくなる事が見出された。また昇温脱離スペクトルにおいて、負分極に比べ正分極面上のTi【O_2】表面では水素の吸着結合が大きくなることが示された。これらの結果から、強誘電体の分極場が接合半導体薄膜の吸着特性に静的な効果を与えていること、およびこの効界は接合界面において半導体酸化物内のバンドに曲りが生じることにもとづくことを明らかにした。 (2)においては、すだれ型電極作製用マスクの設計製作を行ったのち、Al電極を電極巾20〜40μmで取付け、さらに電極間の中央部にPd金属を10〜100nmの薄膜で接合した。室温〜100℃の温度範囲で吸着による弾性表面波の変化をしらべ、酸素吸着により表面波に顕著な減衰が生じたが、【H_2】導入によりほぼ吸着前の状態に戻ることが見られた。Pdが存在しない系ではこの減衰はほとんど生じず、気体吸着による弾性表面波の効果が存在することが示された。
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