固体表面の表面自由エネルギーをテンシオメトリーおよびインバースガスクロマトグラフィーの手法を用いて定量的に決定した。試料として用いたのは、ガラス繊維、炭素繊維、およびそれらの表面修飾物である。 テンシオメトリーの原理は、液体に浸漬した繊維にかかる張力を微量精密電子天秤により測定し繊維への液体の接触角を求めるものである。主として飽和炭化水素-極性液体の二液系を液体としてもちい、繊維の表面自由エネルギーの分散成分および繊維と極性液体との非分散相互作用を同時に求める式を導出した。後者は液体の表面自由エネルギーの非分散成分の平方根に対し直線的に変化することを見いだし、相互作用が両相の表面自由エネルギーの非分散成分の幾何平均で表現できることを明らかにした。直線の勾配は繊維の表面自由エネルギーの非分散成分に対応する。 インバースガスクロトグラフィーの原理は、固体(繊維)を固定相として種々のプローブ分子の保持容量を測定しその値を基に表面特性を解析するものである。飽和炭化水素の保持容量の対数は、炭化水素の炭素数、蒸気圧等に対して直線的に変化し、その勾配から固体の表面自由エネルギーの分散成分を算出した。また、極性分子は保持容量が大きくなる傾向がありその度合から非分散相互作用、主として酸-塩基相互作用を明らかにした。 炭素繊維については、表面自由エネルギーおよび臨界表面自由エネルギーを求めた。繊維を酸化または還元すると、分散成分は殆ど変化しないが非分散成分は酸化により増大し還元により減少した。ESCAによると、酸化により含酸素官能基が形成し、表面の[O]/[C]比と極性(表面自由エネルギーの非分散成分/全表面自由エネルギー)とは直接関係にあった。繊維の表面自由エネルギーから求めたエボキシ樹脂との付着仕事は、繊維ー樹脂界面のせん断強度と良い相関性を示した。
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