研究概要 |
本研究の概要:現在世界的に周期性高分子が小分子と相互作用したときに電導性が大きくなるという実験結果が報告されているが、理論的には周期性高分子の一部に非周期性が加わった場合の取り扱いが確立していない。そこで本研究では、我々が以前から提唱してきたスーパーセルの方法と、繰り込み摂動法を組み合せて、非周期性に対する計算方法を確立しようとするものである。 本年度の進展状況:本年度は、まず昨年まで準備段階にあった拡張ヒュッケル法のレベルでの摂動論を取り扱うためのプログラムを完成した。すなわち、ポリアセチレンがリチウム原子と相互作用したときのエネルギー帯の構造、さらにはポリアセチレンの一部に炭素のかわりに窒素が加わったときのエネルギー帯の計算を行い、モデル系で通常の強い結合の近似で求めた結果と比較して、充分よい一致が得られた。すなわち、ドーパントの効果、および格子欠陥あるいはソリトンに対する取り扱いが、拡張ヒュッケル法のレベルでは可能になったことを示している。次に、二本の高分子鎖がある角度を有して交わって相互作用しているときの取り扱いも拡張ヒュッケル法で行った。これは、ポリアセチレンの鎖間の電子伝導の機構を研究するのに非常に有効と考えられる。これらの結果は、高分子学会,分子構造総合討論会,合成金属の国際会議で発表し、雑誌Synthetic Metal,Chem.Phys.Lett.へ投稿し、掲載されている。また、Int.J.Quantum Chem.へも投稿中である。 次年度の予定:現在、上記のように拡張ヒュッケル法のレベルでのプログラムが完成したので、Ab Initio法でのレベルのプログラミングに主力を注いでいる。これが完成すれば、より定量的で実験家に有用な情報を与える結果が得られるものと考えられる。
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