研究概要 |
真空中で高温に加熱したレニウム線の表面にアルカリハライド(LiI,LiBr,またはLiC1)の分子線やアルカリ(Li)の原子線を入射させて、その表面から放射されるアルカリ陽イオン(【Li^+】)の放射量を、いろいろな実験条件(真空度,表面温度,原子分子線の入射密度,表面を高温処理後の経過時間)の下で測定し、各試料の飽和蒸気圧やイオン化効率などを求めた。さらに、これらのデータを、本人が創案した理論によって解析し、吟味と検討を行なった。その結果、(1)本実験には系統誤差がほとんどないこと、(2)イオン化効率の変化には、レニウム表面の仕事関数の変化が大きく関与していること、(3)中温領域(約1400-1700K)に於ける仕事関数の変化は、主として残留ガス分子の吸着に起因すること、(4)しかし、低温領域(約1300K以下)に於ける仕事関数の変化は、残留ガス分子と入射試料原子分子の共存吸着によること、(5)従って、低温領域に於ける仕事関数の変化は、試料原子分子の入射密度にも依存すること、(6)ただし、高温領域(約1800K以上)では、残留ガス分子や試料原子分子の入射に関係なく、レニウム表面は実質的に清淨な表面に保持されること、(7)試料分子の解離度が100%の時には、試料の入射・吸着によって仕事関数はほとんど変わらないこと、(8)しかし、Li原子を入射させると、残留ガス分子(特に酸素)の吸着による仕事関数の増大作用は、ほゞ100%抑制されること、などを突き止めた。また、入射分子の解離度や電離度並びに表面の仕事関数などが、上記の理論式によって合理的に算出されうることも、明らかにした。さらに、低温領域で試料の入射を停止すると、陽イオンの放射量が一時的に増大することを発見すると共に、この現象も又、当該理論によって合理的に説明しうることが判った。 以上の研究成果の中、一部は既に口頭で発表し、その要点は国際誌上で公表または印刷中である(裏面参照)。
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