研究概要 |
1 非対称ビフェロセン誘導体の合成法として、置換ハロフェロセン同士のウルマン・カップリングおよび対称置換ジハロビフェロセンのフォンブラウン反応による部分置換が検討されたが、目的とするビフェロセン誘導体の合成には、後者の方法が収率,副生成物の種類などを考えて、有利と判断した。これらの合成法では、目的の化合物のほかに、ビフェロセン誘導体,ポリフェロセンなどが多量に副生し、少しでも目的の化合物の収率のよい反応を選ぶ必要がある。置換ハロフェロセンとジハロフェロセンのウルマン・カップリングでは非対称置換ビフェロセンの収率は極めて低く、対称置換ビフェロセン,ポリフェロセンの生成が圧倒的に多かった。対称置換ジハロビフェロセンをピリジン中、銅(I)塩を作用させると、ヨードクロロビフェロセン,ヨードプロモビフェロセンなどが比較的収率よく合成できた。精製した試料は、元素分析,NMRスペクトルなどで構造を確認した。得られた非対称置換ビフェロセンは、丁度半分のフェロセン核が酸化されて、【I(_3^-)】塩となるように、化学量論的【I_2】を用いて酸化を行った。このようにして合成されたビフェロセニュウム塩はその一部分をメスバウアースペクトルの測定に使用し、残りは構造解析用の単結晶を得る目的で、ジクロロメタン,クロロホルムなどの溶媒を用いて再結晶を行った。 2 ヨードクロロビフェロセン,ヨードブロモビフェロセンの一電子酸化物の【I(_3^-)】塩は、室温,液体窒素温度,液体ヘリウム温度などの温度でメスバウアースペクトルが測定された。両者とも、すべての温度で平均原子価を示すスペクトルが得られたが、低温では、ピークの線中に多小のブロードニングが観測され、ジアルキルビフェロセニウム塩で観測された原子価状態の温度依存性が、ジハロビフェロセニウム塩でも観測される可能性を示すものとして注目される。
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