研究概要 |
本年度は2年計画の第1年度にあたることから、次の2点を中心に研究を進めた。 1.本研究目的を遂行するために必要な主要実験装置である表面素反応用実験チャンバーの設計・製作を行った。設計に際しては当該研究所・放射光実験施設の現有設備品である低速電子線回折計,オージェ電子分光計,質量分折計などが機能的に取付けることができるよう配慮するとともに、この装置を用いた実験がすべてのVUV・軟X線ビームラインで実施できるよう十分配慮した。 2.本研究の予備的な実験として軟X線によるいくつかの2原子分子,3原子分子の内殻イオン化とそれにともなう断片化実験をTOF質量分析装置を用いて行った。その結果、分子を構成する窒素や酸素原子のK殻電子励起エネルギー付近で分子の断片化過程に顕著な波長依存性があることが見いだされた。この結果は本研究を進める上で非常に重要な知見である。 内殻励起にともなう現象を、しきい電子,オージェ電子,断片イオンの3重コインシデンス法で観測しようとする本研究の主目的を達成するためにはそれら3種類の信号強度を十分に確保しなければならない。このうちイオンについては上記の予備実験により十分に検出できることが確認されている。しきい電子についてはこれまでの経験よりほぼイオンと同程度と期待される。オージェ電子については唯一不安要因であるが、現在平行平板型の電子アナライザーと位置感応型検出器の組合せによる検出に取組んでおり、この方法により解決できるものと期待している。
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