研究概要 |
手塚の試薬、α-アゾヒドロペルオキシド・ベンゼンcomplex(【I】)の脱溶媒分解によって非水系固体状態で発生するジアゾニウムイオンとα-ナフドールを反応させることによって、世界ではじめて反応性ジアゾエーテル(【II】)を合成することができた。【II】のようなジアゾエーテルは100年以上も前に(1870年)Kehul【e!´】によってジアゾカツプリングの中間体として予言された物質であるが、現在まで多くの試みにもかゝわらず、このものを合成単離することはできなかった。手塚の試薬によってこれがはじめて可能となった。この成果は61年東京で開かれた第8回IUPAC物理有機化学国際会議にて講演、FTHのprof.Dr.H.Zollingerによって評価された。続いてジアゾエーテル(【II】)からアゾナフトール(【III】)への転位反応の検討を行った。この結果はKehul【e!´】の予言したような【II】から【III】への転位は塩基性条件,酸,熱による反応では効率が悪いことがわかった。それに代って光反応によって【II】から【III】が40%の収率で生成する。この新反応の反応機構の研究を行った。光転位は【II】の励起一重項から起り、溶媒の効果は受けない。一方、【I】とフェノール,p-ニトロフェノール,p-クロロフェノール等の反応を行い、ジアゾエーテルを得ようとしたが、現在のところ目的とする物質は得られていない。
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