研究概要 |
前年度からの研究で,αーアゾヒドロペルオキシドをジアゾニウムイオン源として使用することによって,反応性ジアゾエーテルの一つフィニルアゾノーナフチルエーテル(1)がはじめて合成單離された. このことについては昨年の実積概要で述べた. 反応性ジアゾエーテル(1)は今から100年以上も前にKekuleによってジアゾカップリング反応の中間体として予見された化合物である. この重要かつ興味深く又未知のジアゾエーテル結合(ーOーN=Nー)を解明すべく,本年度はかなりの時間をこれに使った. その結果きわめて興味深い新知見を得た. 以下それを列挙し述べる. (i)塩基や酸の作用でジアゾエーテル(1)から転位が起りアゾナクトール(アゾ色素)が一部生成する. しかしKekuleの予見のように定量的にこの反応は起らない. (一部前回の報告にあり). (ii)光反応によってジアゾエーテル(1)からアゾナクトール(アゾ色素)が生成すると考えられていた(前田報告)が,今回純粋に單離したジアゾエーテル(1)を使って光反応を再検討したところ,むしろ構造未知化合物(X)が主生成物であることが明らかになった. 研究は続行中である. (iii)熱反応を研究した結果今回新しい知見が得られた. すなわち80℃の加熱によってジアゾエーテル(1)はラジカル分解,アゾナフトールへの転位反応及びベンザインの生成を行うことがわかった. また室温ではアゾ色素への転位が有利となる. 以上の研究によってようやくシアゾエーテル結合の化学の重要性がわかった.
|