研究概要 |
61年度は当初の計画に従い、3員環・5員環を含むケトン類、即ちジフェニルプロペノン【1!〜】,フルオレノン【2!〜】にフェニルアセチレンのグリニャル試薬【3!〜】を反応せしめ、相当するアセチレンアルコール誘導体【4!〜】を経て、ジフェニルプロペニリデンエテン類【5!〜】やフルオニリデンエテン誘導体【6!〜】を合成する反応の検討を行った。 【1!〜】と【3!〜】の反応では、予測した【4!〜】の誘導体は得られず、【1!〜】は一般のケトン類とはかなり異った反応性を示すので、【1!〜】のケトンとしての反応性の再検討を行った。その結果、【1!〜】とヒドラジン類との反応で、従来知られていた【1!〜】のヒドラゾン類の生成のみでなく、【1!〜】の開環,アミノシンナムヒドラジド誘導体の生成,脱アンモニアの反応を経て、ピラゾロン誘導体を得ると言う、全く新らしい反応を見出した。この結果は付表の文献1として発表した。 【2!〜】と【3!〜】の反応では予期した【4!〜】の誘導体を得、これらをHClやHBrと処理して、相当するアレン化合物【6!〜】を得る事が出来た。しかしこの【6!〜】のハロゲン化合物はかなり不安定で、容易に熱二量化する事が判った。これら二量体中のハロゲン原子は活性で、分離精製の途中でしばしば加水分解生成物を与える。以上の反応で得られた7種類の化合物をすべて分離精製し、それらの構造を各種スペクトルのデータを解析して決定した。この結果は、61年10月の日本化学会秋季年会(名古屋)において発表し、目下投稿準備中である。 更に以前合成されていたシクロヘプタトリエニリデンシクロペンタジェニリデンエテン誘導体の、IR,UV・可視,発光,NMRスペクトルなどの測定を行い、その性質を検討した。その結果、この誘導体が【S_2】励起状態から発光すると言う、珍らしい現象を発見し、付表の文献2として発表した。
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