研究概要 |
脂肪族アミンの窒素原子, あるいはピリジン等の複素芳香環に含まれる窒素原子を多環系に組み込むことにより, それら窒素原子の孤立電子対を希望する一定の方向に向けさせ, 全てを一点に集中させ高電子密度の空間をつくり出し, それらの化合物にプロトンアクセプター, 有機金属錯体配位子, あるいは包接化合物のホストとしての機能を持たせた化合物を設計し, それらを合成し, 物性ならびに種々の金属イオンに対する選択性等について調べた. 分子のつくる正四面体の各頂点に4個の窒素原子を配し, それを6個のメタキシリレンあるいは2,6-ルチジレン橋で架橋した化合物を合成した. 特に6個とも2,6-ルチジレン橋で架橋した化合物は, 4個の橋頭位窒素原子, 6個のピリジン環の窒素原子の計10個の孤立電子対が分子内空孔の一点に集中した. 高電子密度空間を有する化合物であり, アルカリ金属(LiからCsまで)他銅等の遷移金属と錯体をつくることができる. 特に4個, 6個のピリジン環を含む化合物では合成の段階でカリウムイオンが分子空孔中に入ったクリプテートとして得られた. それらの構造はFABマススペクトル, 元素分析, さらにはX線結晶解析によって確かめられた. 水層/有機層間のアルカリ金属ピクレートの分配実験において, 6個のメタキシリレン橋のものは全くイオンを輸送せず, 2個がルチジレンに置き換ったものでは一部イオンを輸送し, 4個あるいは6個全部がルチジレンに換ったものでは完全にイオンを輸送することがわかった. さらには分子内運動に関して, 温度可変NMRスペクトルにより, 光学異性に関してシフト試薬を加えた低温NMRスペクトルの測定により種々の知見が得られた.
|