研究概要 |
ササニシキ、ふくゆき、フクニシキ等、いもち菌に対する抵抗性に差のある6品種のイネを用意し、おのおのについて健全体、り病型(S型),およびかつ点型(R型)の3つの状態のイネを用意した。健全体とり病体(SとR型)のホモジネートについて、不飽和脂肪酸を基質にして酸化酵素活性を調べた結果、両者に顕著な差のあることを見出した。すなわち、り病イネではリポキシダーゼ活性が激増し、一方健全体では活性は殆んど現われなかった。 このことは、イネはり病するとリポキシダーゼが体内で発現すことを意味している。なお、リポキシダーゼ活性は酸化生成物をエーテル抽出し、抽出液のUV(236nm)スペクトルを測定すことにより評価した。り病イネの上記ホモジネートを1.5×【10^4】gにて遠心分離を行ない、クロロプラスト等の沈澱を除去した上清液を用いて不飽和脂肪酸の酸化能を調べた。その結果、上清液は全く酸化能力をもたないことがわかった。このことは、リポキシダーゼがクロロプラストに結合していることを意味している。 α-リノレイン酸を基質にした酸素反応の生成物を詳細に調べた。その結果、上清液は全く酸化能力をもたないことがわかった。このことは、リポキシダーゼがクロロプラストに結合していることを意味している。 α-リノレイン酸を基質にした酵素反応の生成物を詳細に調べた。その結果、α-リノレイン酸の13位が優先的に酸化され、9、16位の酸化された生成物もおのおの10%程度含まれていることがわかった。得られた生成物は、相当するパーオキシ脂肪酸である。生成物の構造は、還元することにより、アリルアルコールを与えることから推定した。アリルアルコールをメシラートに変え、過酸化水素を作用させることによりパーオキシ脂肪酸を化学合成することができる。合成品は、天然物とよく一致した。パーオキシ脂肪酸は抗いもち菌活性を有するのみならず、強い植物細胞毒性を有しており、イネのいもち菌抵抗性に本質的に関与しているものと思われる。 次年度においては、R型、S型と酸化酵素の関係、および酸化酵素の可溶化等に関する研究を行ないたい。
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