研究概要 |
配位子置換平衡を活用する幾つかの新しい等速電気泳動法を開発した. 1.オキシンおよびAPDCキレート抽出系を併用する重金属イオンの分離,DMFを泳動溶媒とし,HClO_4,HClをそれぞれリーディング液,ターミナル液とする泳動系を用いるとき,SーS配位のピロリジンジチオカルバミン酸(APDC)およびNーO配位のオキシンキレートとして抽出前分離した重金属イオンが極めて容易に泳動分離できた. たとえば,Fe(III),Cd(II),Zn(II)Pb(II),Mn(II)を上記有機試薬とのキレートとして抽出し,その有機相の10μl(各金属1×10^<-9>mol含む)を直接泳動系に注入することで,それら重金属イオンが対応するクロロ錯体に配位子置換され,良好なイソタコフェログラムを与える. 2.重金シアノ錯体の泳動分離 泳動化学種の錯化剤の供給源としての機能を,ターミナルゾーンに保持させた,別種の新しい泳動系として,シアン化物イオンをターミナルイオンとする泳動系を開発した. 試料として注入された重金属イオンは,泳動系内で負の電荷をもつシアノ錯体に変換され泳動分離される. その際の実行移動度はリーディング液のpHに大きく影響される. 3.希土類元素の泳動分離 ターミナルゾーンを泳動イオンの錯形成剤の供給源とする,いま1つの新しい系として,EDTAをターミナルに存在させる方法を希土類元素を対象として展開した. この泳動系に注入された希土類イオンは,EDTAキレートを形成し負電荷イオンとして泳動する. これらキレートの有効移動度の大きさの順は,その安定度数の大きさに支配されていることが示唆された. 4.その他,関連する基礎的検討として原子吸光法,電気化学的方法,温度滴定などによリ研究を進めた.
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