研究概要 |
キレート抽出系およびイオン会合抽出系における界面反応の寄与を、主に高速撹拌法により平衡論的および速度論的に検討し、以下の成果を得た。 1.キレート抽出系における界面現象 (1)βーヒドロキシオキシムは、解離型と非解離型が共に界面吸着性を示し、撹拌状態のおける吸着機構がラングミュア式を用い解明された。SME529およびLIX65Nによるニッケル(II)の抽出速度が、ニッケル濃度、水素イオン濃度および試薬の界面吸着量にそれぞれ一次で比例することより、抽出の律速過程は、界面におけるニッケル(II)イオンと試薬の解離型との1:1錯体の生成反応であることが明らかにされ、界面における反応速度定数が決定された。抽出速度への置換基効果と有機相溶媒効果についても界面機構より説明された。 (2)βージケトン類は、解離型のみが界面吸着性を示した。吸着量のpH依存性は、解離平衡と分配比のpH依存より説明された、種々のβージケトンについて、解離型の吸着定数と非解離型の分配定数との間に一次の比例関係が見い出され、吸着性と分子構造との関係が明らかにされた。 2イオン会合抽出系における界面現象 (1)1,10ーフェナントロリン類のトリス鉄(II)錯体の界面吸着性に及ぼす置換基効果、溶媒効果および陰イオン効果が明らかにされた。試薬の分配定数が大きい程、イオン対の界面吸着性は低下した。また、陰イオンの水和エネルギーが大きく抽出されにくいもの程、イオン対の吸着性は増大した。 (2)1,10ーフェナントロリン類による鉄(II)のイオン会合抽出速度が検討され、鉄(II)イオン濃度および試薬濃度依存性から、1:1錯体の生成が律速であることが示された。試薬の分配定数が大きい程、界面反応によるイオン対生成の割合が大きく、また、イオン対の界面吸着性が大きい程、見かけ上バルク相への抽出速度が抑制された。
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