研究概要 |
1.ジチゾン(H_2dz)ーピリジン塩基(py)によるCo(II)Ni(II)の協同抽出機構:有機溶媒としてクロロホルムを用いて検討した結果, 抽出の律速段階は, (1)式にしたがう水相内錯形成反応であることがわかった. ただし, 式 M(py)^<2+>+Hdz^-→M(Hdz)(py)^+ (1) 中のM^<2+>は, Co(II)およびNi(II)を示す. M^<2+>に配位するピリジン骨格のN原子の塩基性が増大すると, (1)式の反応速度も大きくなった. また, オルトーメチル基には, 反応を増速する効果があった. これらの結果については外圏型錯体〔M(H_2O)_5(py)_<2+>,Hdz^-〕の存在を仮定して合理的に説明できた. 1,10ーフェナントロリン(phen)もジチゾナト錯体の抽出速度を増大する効果があった. その機構は, Co(II)抽出では(1)式で表わされたが, Ni(II)の抽出の律速段階は(2)式であった. Ni(phen)〓+Hdz^-→Ni(Hdz)(phen)〓 (2) 2.H_2dzーphenによるCo(II)とNi(II)の協同抽出分離:本抽出系の水相で生成する錯陽イオンのうち, Ni(phen)〓はHdz^-に対して反応不活性であることがわかった. 一方, Co(II)抽出でのphenによる反応速度促進効果は, Co(phen)〓が生成する条件でも失なわれなかった. これらの知見をもとにしてCo(II)とNi(II)の分離法を開発した. すなわち, phenを水相に加えてNi(phen)〓を生成させたのち, H_2dzーCHCl_3溶液と振り混ぜれば, Co(II)のみが有機相に定量的に抽出され, Ni(II)は水相に残った. この場合phenはCo(II)に対して協同効果を示し, Ni(II)をマスくする. 本原理による分離法は, H_2dz以外のキレート剤, 8ーキノリノールなどの系にも適用できた.
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